精肉のECに携わり、数年経ったので、精肉ECでの勝ち筋の見つけ方について気付いたものを共有します。

はじめに

私はWebサービス制作を個人事業で行っている者であり、地元都城市だけではなく全国のECに携わっています。
これまで上場企業や中小企業、海外、とくに欧州の企業など様々な企業様のサイトを制作、運営の補助をしてきました。
その中でも新しいチャレンジである地元都城の精肉ECを例に、精肉ECについて情報を共有します。

結論

解説が長くなってしまいましたので、先に結論を紹介します。

精肉ECの鍵はステージごとのペルソナ設計にある

精肉ECは価格、味、見た目などモノでの差別化はとても難しく、広告やSEOといった集客手法の効果もさほど高くないです。
正直ものすごく厄介で成功へ一足飛びにはいきません。地道に堅実に、時間を書けてゆっくりとやることをおすすめします。

モノではなくて体験を売る

お客さんの大切な人に喜んでほしいという願いや、お客さんが誰かを思って費やす時間に寄り添う体験をデザインすることがとても大切です。

ステージごとのペルソナの再設定

  1. ステージ1(スモールスタート):
    まずは単価の高いギフト需要に特化します。ギフトでは送り元と送り先、つまりUXが異なります。ここでは購入者をペルソナとし、それにいかに寄り添うか、どうすれば彼らの描く未来の手助けができるかを考えます。
  2. ステージ2(日常使い):
    次第に増えてきた日常使いの顧客をペルソナとします。料理が苦手な方もこのお肉ならとってもハッピー!のようにコンプレックスに訴えるなどして解決を提案します。

精肉ECとは

ここで、精肉ECとはその名の通り精肉のオンラインショッピングです。
精肉とは僕達が普段スーパーで買う豚肉や牛肉、鶏肉などの食肉とここでは定義しますね。

精肉ECの現状と課題

精肉には賞味期限や消費期限があります。その期限を伸ばすために、HACCP対応の加工場で冷凍処理をして販売されます。
加工処理に関しては工場側の問題ですので今回は省略して、ECにおける課題について説明します。

クール便問題

前述したように、お肉は冷凍処理を行いクール便(冷凍)にて配送を行います。
クール便は、通常配送料金に加えて、冷凍クール便代金が発生します。この冷凍クール便は、一定ではなくサイズにより加算されることがポイントです。

ですので、送料無料にする障壁は通常の商品と比較すると、かなり高くなります。

サイズヤマト運輸さん佐川さん
60サイズ¥275¥275
80サイズ¥330¥330
100サイズ¥440¥440
120サイズ¥715¥880
2025年8月、独自調査

梱包問題

ブランド価値に直結する梱包にも冷凍問題が絡んできます。
冷凍商品はどうしても溶けてしまいますので、商品や梱包が溶けた水滴で濡れてしまいます。
ですので梱包にはある程度水で濡れても大丈夫な素材の選定や、水濡れしても印刷がにじまないような処理が必要です。

二重、三重に梱包して自然解凍をしづらくしたり、梱包サイズにより手元に届くまでに実際どのくらい自然解凍されるのかを事前に確認する必要があります。

参考記事:発送用資材には正しくこだわるべきだ

価格問題

配送やクール代、冷凍代、梱包代など、精肉ECでは商品代金以外に発生するお金がとても多ので、お客様の支払うお金はどうしても高額になります。
いまや三田牛や松阪牛などの有名ブランド肉でさえ、ちょっと高級な肉屋さんやスーパーで適正価格で手に入れることが出来ますので、割高感はどうしてもつきまとってしまいます。

ふるさと納税問題

都城市はふるさと納税の寄付額が全国でもトップクラスであり、実際に多くの精肉業者や加工業者が利用しています。そのふるさと納税の感覚でECに挑戦してしまうとほぼほぼ負けます。その理由は、ふるさと納税とECでは構造が全く異なるからです。
ふるさと納税は制度によって売れているのであり、ECにとってとても大切な、商品や設計によって売れているわけではありません。この感覚でECをはじめると、価格設計やUX、導線の設計など全てがズレてしまい、結果的に売れないECへとなってしまいます。

以前、私が「ふるさと納税から自社ECへ:控除と返礼品を活かした顧客体験を考察」という記事も書きましたので、そちらもあわせてご確認ください。

頼りないリピート導線

精肉ECはたしかにギフト需要があります。しかしながら一般的にギフトを送るのは年に数回ほどしかありません。さらにギフト購入者と利用者が異なる場合が多く、購入や調理、食事といった体験は別々の人が行います。これにより食事による良質なレビューが集まる場合もありますが、通常「おいしかったよ」と伝えるのはそのギフトを購入した方に向けられます。

差別化が難しい

あなたが売ろうとしている牛肉や豚肉は、ブランドさえ違えど結局は同じ肉です。ヒレ、カルビ、バラ、モモなど部位ごと、用途ごとにカットされたものばかりで、競合他社どころか、近所のスーパーとの差別化さえ難しい状態にあります。

ビジュアルの限界

精肉本来のビジュアルでの差別化は容易ではあいりません。部位を見せられてもそれが鳥なのか、豚なのかわからない方も居られます。
生肉単体ではなく、調理例やパッケージでの差別化が必要になります。

課題まとめ:精肉ECには課題が山積

このように精肉ECには課題が多くあり、梱包、配送、冷凍などどうしても商品価格に添加する必要のあるコストが多く発生してしまいます。

精肉ECでの戦い方

コンセプトをはっきりさせる

あれやこれやと手を付けることよりも、ギフトや高級商材、もしくは低価格商品、もしくは惣菜などどれかに絞って戦うほうが、将来の道筋が見つけやすいと感じています。ギフトならギフト単体、高級食材と惣菜を混ぜない、高価格帯の商品と低価格帯の商品を同一に並べない。もし必要がある場合は別のサイトにするなどの工夫が必要です。

メルマガ・SNSの役割

私の誤解があるかもしれませんが、ビジュアルの訴求という面では精肉ECとSNSはあまり相性がよくありません。
和牛の場合は色やサシ、BMSやBFSでうまそうだな!と思うこともありますが、豚や鳥などでは精肉単体を出すのではなく、調理例や調理後のビジュアルを紹介する必要があります。

しかしながら、ビジュアルの訴求ではなく、顧客とのコミュニケーションツールとしてメルマガやSNSを利用することで、その役割は一気に上昇します。

露出を増やし、チャンスを得る

これはどのECでも同じですが、広告に予算をかける方はそう多くいません。
広告の仕組みを知らない方も多く、どこに広告を出すのかも知らない人も多くいます。

ここで言う露出とは広告を含めた世間に対する露出です。
キーワード広告だけではなく、SNSへの広告、同梱物による誘導、比較サイトへの出品など様々な露出の形態があります。

精肉ECの戦い方

まずは広告商品のギフト組を行い、少ない商品数で挑戦することをおすすめします。
誰が誰に向けた商品なのか、しっかりとペルソナの設定を行い、購入者が送り手にどのような気持ちになってほしいのかを想像し、どうすれば購入者の意図が反映するかを十分にビジュアルやパッケージ、梱包で表現します。

これを学ぶ一番良い方法は他店の商品を購入することです。
購入した商品にある同梱物やパッケージから自社と比較し、足りないものを埋め、自分たちの色を添えます。
価格は高くなりますが、仕方がありません。そのためのペルソナ設計になります。

毎月100万以上コンスタントに売れるようになると、様々なお客様の声が集まってきます。
お客様の声はSNSやアンケートにより直接収集します。商品や配送の手筈が整った段階で、ギフト以外の新しい商品に取り組みます。

 

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