商品を送るあの子は減点方式

通販において、ユーザーが一番最初に触る商品は梱包資材である段ボールだ。
宅配業者から受け渡された段ボールを手にしたユーザーには、視覚や触覚、重力などからたくさんの情報が与えられる。茶色い、ザラザラ、少し濡れてる、重い、軽いといった情報だ。

例えばユーザーが少し背伸びをして御社の商品を買ったとする。それは彼氏や彼女へのプレゼント、もしくは自分へのご褒美かもしれない。
購入してから届くまでユーザーはとても待ち遠しく思うはずだ。

物事を単純化するために、私が趣味の釣り具を通販で買ったとする。
商品はシマノ社のスピニングリールである「ステラ」だ。すべての釣り人が憧れる10万ほどするリールだ。
何か月か小遣いを貯めてやっと購入ボタンをクリックして、各種情報を入力し、決済完了ボタンを押したときのこのワクワク感は、商品が届いて実際に触り、釣り場に行って何度も使って、魚を釣り上げる所まで続く。

このとき、ワクワク感というこの非常に高まったポテンシャルの一番最初の敵が発送用の資材である段ボールになる。

もちろんこの段ボールが濡れていたり、潰れて変形していた場合は配送の問題であるが、例えば横に「みかん」と書かれてあったり、段ボールが何のデザインもされていなかったり、そのデザインがダサかったり、別のブランドの名前が入っていたりした場合、このポテンシャルは一気に冷めてしまう。

確かにミカン箱であったとしても、その中に梱包資材が入っていて、その底には無傷のステラの箱があり、その中に憧れのステラが入っているのは分かっている。
ミカン箱をけなしているのではない。だけど、だけど、だけど!!というもどかしさを私は覚え、さらに「中身は大丈夫か?」という不吉な予感が芽生える。また、都会のおしゃれなマンションの自室の前に汚れて誰かに踏まれて靴跡がついているような残念な箱が置き配してあった時の何とも言えない感情を覚えてしまえば、二度と頼むことはないだろう。たとえそのステラが他のお店より安くてサービスが厚かったとしてもだ。

あの子の減点法式は非情だ

私の例えのように、ポテンシャルは、一度裏切られてしまえばものすごい勢いで落ち、さらに「本当に大丈夫か?」という別のネガティブな要素を発生させてしまう。
もちろん手元に届いたステラやステラの箱が完全に無事で、本体もすこぶる快調であったとしても、次にそのお店で買うことに対してどうしてもネガティブな印象を持ってしまう。

ステラが無事ならそれで良いじゃない?と思うかもしれないが、無事であることは当然のことであり、そのためには本体に支障をきたさないよう、あらゆる不測の事態にも備えた丁寧な梱包がされていることも当然である。この当然が裏切られたことによる衝撃はとてつもない破壊力と浸透力を持っている。

このように商品を買ってくれたあの子の原点方式は本当に非情であり、かつそのポテンシャルもとてもガラスのよに脆いものだということが理解できたかと思う。

発送用の段ボールから恋が始まる

理想から言うと、発送用の資材は御社のブランドに沿ったデザインがされており、丈夫で多少の水濡れでも問題ないものを選ぶべきだ。
この発送用資材はブランディングの大切な要素であり、その要素の中でもプライオリティは高い。

商品が頑丈な鉄の箱で送られてきたにも関わらずその箱が崩れていた場合、ユーザーはいったいどんな運び方をしたんだ?とお店に向けられていたネガティブなベクトルを運送業者へ向きを変えてくれる。

またその発送用の資材がビビッドでとてもおしゃれなものであった場合、有名ブランドの紙袋のように、その箱に対する所有欲や憧れを生じさせてくれる。

このように、高いポテンシャルをいかに持続させることが出来るかというカギを発送用段ボールは担っている。

商品の価格を釣り上げてでも、発送用の段ボールにはこだわるべきだ。