ウェブデザイナーから見た都会と田舎の違い

都会と田舎のウェブデザイナー

都会から田舎に移り住んだ理由

これまで東京のど真ん中、麹町で働いていた自分が宮崎の田舎に引っ込んだ理由はいくつかありますが、一番の大きな理由は都会の閉塞感にありました。
都会ではすべてが近い。他人との距離も、建物と建物の間の距離も近い。上京した時からずっとそう思っており、今思えば常に息苦しさを覚えていました。
この息苦しさが閉塞感につながり、都会から離れる決断をしました。

たしかにウェブデザイナーやデザイナーという職業に従事していますが、私には美術的な感覚もありませんし、洋服もオシャレでもない。独自の秀でた感覚も持ち合わせていません。
出来るだけ毎日服を着て、同じ行動をすれば仕事以外の事を考えなくて済むという考えを持っていますので、決して目立つような人間でもありません。
しかしクリックさせたり、任意のページに誘導させたりすることは苦手ではありませんので、私の仕事はどちらかというと規格に従ったモノづくりをする工業デザインの要素の方が強いかと思うこともあります。

都会と田舎では色が違う

あくまで私の感覚なので、果たしてこれが一般的かといわれると人それぞれだと思いますが、わたしは都会と田舎の色の違いに未だ泣かされています。
色というのは、赤や青といったcolorのことで、私が働いていた麹町の青と、宮崎の青は同じ青でも異なって見えてしまいます。

例えば麹町の青はビビットで感情的、情緒的であり、人の感情を物理的に動かしますが、宮崎の青は海の青のような自然の色で、安らぎや解放感を与えるような印象です。
同じ青(#0000ff)でも周りにある色が異なるので違って見えるのでしょうか。

この青と、周りにある色を「色の組み合わせ」とこの記事では定義します。

都会と田舎、ウェブデザイナーにとってのメリットとデメリット

田舎は身の回りにある色の組み合わせが少ない

私だけかもしれませんが、デザインをする際は身近にある色の組み合わせを多く採用しがちです。
例えば誰かが着ている洋服の色や看板、お店のインテリア、ウェブサイトなどからよくインスピレーションを受けてデザインを組み立てることが多くあります。

都会では人やモノがとても多いので、本当に多くのバリエーションを見ることが出来て、採用するチャンスもとても多くありました。都会の色同士を組み合わせると、とても鮮烈な組み合わせが出来るようになり、瞬間的に目を引くようなデザインを組み立てやすかったと思っています。

ですが田舎ではお店も人もモノも少ないため、どちらかというとトレンドの中心よりというのでしょうか、妥当な色の組み合わせをよく見かけるようになります。

だからと言って、田舎には色の組み合わせが無いというわけではありません。
田舎では都会にはない自然な色の組み合わせが多くあり、とても多くの発見があり、これが田舎の強みだと思います。

田舎のウェブデザイナーは外に出よう

このように色の組み合わせには都会的な組み合わせと田舎ならではの組み合わせの2通りがあるのでは?と考えています。
先進的なビジネスイメージを彷彿とさせるウェブサイトをデザインする場合と、おふくろの味をテーマとするECでは色使いは全く異なるように、私たちウェブデザイナーには都会的な組み合わせと田舎的な組み合わせ、そのどちらも求められます。
得意な色の組み合わせしかできないと、得意でない方を苦手と感じるようになってしまい、段々とデザインの幅も狭くなってしまいます。そういった苦手意識はお客様をこちらから選んでしまう理由の1つになりますし、お客様にとってより良い事ではありません。

多くの色の組み合わせを見つけるうえで、少なくとも私には、より外に出て、時には遠くまで足を延ばし、多くのインスピレーションを得るための努力をする必要があるということが分かりました。
私のような平凡な人間には行動すること、外に出る事はインスピレーションを得るための大切な仕事の1つであることを再発見しました。

東京にいたころは、休みの日はほとんど外に出ずに引きこもりの生活を送っていたので、これが一番の変化です。

都会と田舎でのウェブデザイナーの仕事の違い

ウェブデザイナーの制作報酬に大きな差がある

ウェブ制作の一般的な価格は東京と地方では差があり、例え全く同じものを作って納品したとしても、どうしても東京の方が報酬は多くなり、ウェブデザイナーの私たちの手元に入る報酬にも当然差が出てきます。土地代や人件費が異なるのでこれは当然の事です。
自分の手元に入る報酬が少ないということは、会社員の場合には会社に入ってくる報酬にも差があるという事です。
そのため余程潤沢な会社でない限り、東京と地方で同じ賃金を得ようとする場合には、何らかの行動をする必要があります。

ウェブデザイナーとしてより専門的になるか、より汎用的になるか

会社に入るお金が少ないということは、固定費や人件費を減らすことが会社には求められます。一般的にウェブデザイナーの求人を見ると都会と田舎では大きな差があります。
田舎のウェブデザイナーが都会と同じ報酬を得るためには、よりデザインの力を身に着けるか、見積もりの作成が出来るようになったり、納品レベルのコーディングが出来るようになったりして自分の手数を増やすの2つだと考えます。

よりデザインの力を身に着けること、デザイン以外の手数を増やす事、両方とも勉強が大切です。
この業界ではプログラマーのように日々勉強を続けるデザイナーやディレクターの数が多くは無いと思います。

ウェブデザイナーだからといって仕事の枠を自分で決めることなく、学び挑戦する姿勢を失ったらいけない。田舎に来てより強く感じています。

田舎ではウェブデザイナーに必要な体験が減る

ハッカソンや勉強会など様々なイベントを体験する機会が田舎では減ってしまいます。都会ではこれまであまり興味を持たなかったジャンルのイベントにも参加して、新しい興味を得た体験を多くしました。数学、情報処理、統計など今でも役に立つ知識を得る切っ掛けを多くいただきました。
ですが田舎ではそもそもそういうイベントが少ないため、なかなか体験をする機会に恵まれません。そのため常にそういった情報が無いかアンテナを張っておく必要が田舎にはあります。これにはSNSがとても役に立ちます。SNSで様々なイベントが紹介されていますので、なんにでも興味をもって参加すると良いかと思います。
体験が減ることは落とし込むデザインに大きな差を産んでしまうと考えていますので、この点は注意すべきことだと考えます。

求められるウェブデザインのクオリティは都会も田舎も関係ない

都会だから、田舎だからという理由で納品物のクオリティに差が出てしまうのはおかしな話です。
報酬が高いから東京ではここまでやった。報酬が少ないから田舎ではこれはしないというのは、関心出来る話ではないと思います。

お客様の予算が少ないのであれば、その予算内でのやり方を考えれば良いだけの話ではないでしょうか。
訪問回数を減らしたり、テキストの流し込みなど簡単な作業をお客様に手伝っていただいたり、電話やFAXではなく、チャットルールやメールでの連絡に統一したり、色々なやり方があります。

田舎では広告や宣伝に関する意欲が薄い

私の住んでいるところだけではないと思いますが、田舎はとかに比べて広告や宣伝に対する意識がとても薄いと感じます。
例えば飲食店を考えますと、極端なことを言うと美味しいお店は残り、あまりおいしくないお店は潰れてしまいます。田舎ではそもそも飲食店の数が少ないので、美味しいお店しか残らない状況を産みやすいです。
つまり残っているお店は何もしなくてもその田舎では勝ち続けることが出来るので、広告に対する意欲は低くなります。
求人に対する意欲は都会も田舎も変わりないかな?というのが実感です。

都会で働いていたウェブデザイナーが田舎に戻って起きた変化

都会でも田舎でも勉強をし続けることに変わりはない

田舎のウェブ制作では、都会と比べ1つのサイト作成に関わる予算が減ることから、サイト制作にかかわる人間も減る傾向にあります。
しかし私たちには都会と同じクオりティの成果物が求められます。

したがって、私たちウェブデザイナーには、今の技術をひたすら高める事と、新しい知識を得て手数を増やす事が求められます。どちらか一方ではなく両方です。

都会と田舎では色の組み合わせは違うので、田舎にない都会の色を探すには都会に行くしかないです。都会に行くにはお金がかかります。
お金を捻出するためには報酬や給料を増やすしかありません。

こういう事を考えることが出来るようになったことも、私の大きな変化の1つだと思います。